For Lifelong English

  • 鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授

第113回 Linking Wordsを使えるようにしよう―TOEFL iBT® テスト、SAT、GREなどに備えて

数年前、首都ワシントン市とニューヨーク市周辺の大学のwriting centersを訪れ、tutoringの現場を見せてもらいました。発信型英語プログラム用のwriting serviceの必要性を感じていたからです。どの現場でもかなりの時間を掛けてlinking wordsの使い方についてtutoringしていたのが印象的でした。何をどう述べたいか、論点を整理し、linking wordsを使い的確に表現できれば良いだけのことですが、それが簡単な作業ではありません。

筆者らの学生もまさに同じ問題で悪戦苦闘していましたから決してよそ事ではありません。学部1、2年生から事細かく教えているつもりでしたが、一向に満足できる結果に繋がらずに思案に暮れておりました。(*1)しかしながら、アメリカ人学生でさえ授業に加えてwriting serviceの個別指導を受けてもなお四苦八苦しているのですから、日本の学生が授業だけで満足な効果を出せるわけがありません。それ以上のケアを要することを確信させてくれる光景でした。

その確信を一層強めたのは、アメリカの大学では学部生のみか、大学院生さえ同じ問題を抱えていることを想定させる次のようなサイトを見つけたからです。Yale UniversityのGraduate Writing Center, Yale Center for Teaching and Learningは、“Linking Words [Conjunctions and Connectors]”と称する学習サイトを設けています。筆者が視察した各大学のwriting centerのtutorial sessionの院生tutorsはかなり優秀に思えましたが、昨今の大学院生の全員が必ずしもそうでないということなのでしょうか。(*2)

あるいは単に、Yale University Graduate Writing Center所属の院生のためのtutors用のマニュアルとして纏めた学習サイトなのか定かではありません。(*3)いずれにせよ、世界大学ランキング・トップ校のYale Universityの学生でさえこうした問題を抱えていることは確かであり、日本の大学生が苦労するのも無理からぬ事と言えます。早速このサイトを開いてみましょう。

Graduate Writing Center, Yale Center for Teaching and Learning, Linking Words [Conjunctions and Connectors]”(*4)

このサイトでは、conjunctionsと connectorsを総称してlinking wordsという名称を使用しています。文法書により名称は異なりますが、linking wordsにおけるconjunctions とconnectorsは、2つまたはそれ以上の文、節、語句を繋げ、それらの間の意味的、論理的関係を明示します。このサイトの要点を簡潔に纏めます。例文等は省きます。サイトを参照してください。

1.Conjunctions(接続詞)
2つ以上の節を一文に、2つ以上の語句を一語句に連結する。主要なものは以下3種類である。
(1)Coordinating(*5)conjunctions(等位接続詞)
→2つ以上の文法的に対等のものを連結する。and, or, but, yet, nor, etc.
Example:“Mary had not gone to the store nor had she visited the gym.”(“Mary had not gone to the store.” “She had not visited the gym.”の2つの文を連結)
(2)Correlative conjunctions(相関接続詞)
→文法的に対等なペアを連結する。both…and, not only…but also, either…or,
neither…nor, whether…or not, etc.
Example:“I will not only grow the cells for the assay, but also interpret the results.”(“I will grow the cell for the assay.”“I will interpret the results.”の2つの文を連結)
(3)Subordinating(*6)conjunctions(従属接続詞)
→2つの節の1つを従属節(sub clause)として、もう1つを主節(main clause)として連結させる。as, because, since, so, so that, although, though, after, before, until, while, if, unless, provided, whichever, whenever, etc.
Example:“Although very cute(sub), pandas are not suitable pets(main).”(“Pandas are cute.”“Pandas are not suitable pets.”の2文を連結)

2.Connectorsは2つの文を論理的に繋ぐ。
文の数は2つの独立文のままで、conjunctions(接続詞)のように、1つの複文(complex sentence)または重文(compound sentence)にならない。(*7)意味的にはconjunctionsと重なるが、形態的には例外を除いて異なり、(*8)その数は圧倒的に多い。文中の位置は流動的で、文頭、文中、文尾のどこでも挿入される。

Conjunctions   Connectors
andに呼応する also, in addition, additionally, moreover, furthermore, etc.
butに呼応する however, even so, though, nevertheless, nonetheless, still, yet, in contrast, on the other hand, on the contrary, etc.
so, becauseに呼応する therefore, thus, consequently, hence, for this reason, as a result, that is why, etc.
so(similarity)(*9)に呼応する similarly, likewise, etc.
beforeに呼応する beforehand, before this, first, then, next, afterwards, etc.
orに呼応する alternatively, otherwise, etc.
whileに呼応する meanwhile, at the same time/moment, etc.

Example:“The windows were very old. Consequently, the room was cold and drafty.”(“The windows were very old.”と“The room was cold and drafty.”の2文をconsequentlyで繋げる。もし接続詞のsinceで繋げると、“Since the windows were very old, the room was cold and drafty.”という複文になる。)―以上、“Linking Words [Conjunctions and Connectors]”Graduate Writing Center, Yale Center for Teaching and Learningの筆者による要約+補足説明

読者の多くがこのサイトを見て、大学受験英語で馴染みの項目であることから、目新しいものはほとんどないという印象を受けるでしょう。よって、アメリカの大学や大学院で改めて学習しなければならない項目であろうかと驚くかもしれません。筆者自身も高校時代を振り返ると、以前お話しした通り、当時受験生の間で愛読されていた山崎貞著の『新自修英文典』を何度も読み返したことから、これらの項目に関しては、このサイト以上のことは知識として持っていました。

しかしながら、conjunctionsもconnectorsもこの短いサイトで語り尽くせる程単純なものではありません。読者の中には将来英語教育に進もうと考えている人がいると思いますが、そのためには、アメリカの大学院の言語学科に設置されているmorphology and syntax(形態論・統語論)という科目を取り、英語分析の基礎知識を学ぶ必要があります。これら2項目(conjunctionsとconnectors)はその一部ですから、これを機にしっかり抑えておく事を勧めます。オンライン上にも学習できるサイトがあります。Morphology and syntax online coursesと入力し検索してみましょう。サイトを選んだらこれら2項目のセクションをチェックしてみましょう。Moocsもサイトを出しています。

Linguistics Moocs Free Online Couses|Moocs List

更に高度の基礎知識に関心ある読者には、A Comprehensive Grammar of the English Language(Randolph Quirk他.1985. Longman) を勧めます。(*10)接続詞(conjunctions)については、少なくとも13 Coordination; 14 The Complex Sentence; 15 Syntax and Semantic Function of Subordinate Clausesと13~15の3セクション(都合200ページ)を費やしています。ここではlinking wordsという用語は使わず、分詞構文、関係代名詞、関係副詞、前置詞句、不定詞、副詞などとともに、文や節や語句を組み合わせるものとしてconjunctionsとconnectorsを取り上げています。

すなわち、複数の文や節や句を論理的につなげる文法メカニズムは、conjunctionsやconnectorsに止まらず、他の文法項目にも広がります。Yale Universityのサイトでは触れていませんが、例えば、“John wouldn’t say such a nasty thing.”という文の深層には表層に存在しない“although you told me that he did”のような表現が想定されます。表層では1文でも深層では2つの文が合体された複文と解釈できます。ほんの一例ですが、仮定法なども絡みかなり、受験英語の知識を超えた複雑で広範囲に亘る項目です。

また、日本の大学受験英語は受信モードであるため、折角受験英語で習ったものも、発信モードとなると使えないことが多いのです。筆者の学生の多くもまさにその問題を抱えていました。これらlinking wordsを含む文の並び替え問題や穴埋め問題は解けます。また、日本語の文章をlinking wordsを使って英訳することもできるでしょう。しかし、それを使って会話したり、書いたりすることには難を感じてしまうのが現状です。(*11)

では聞いたり読んだりすることがスムーズにできるかと言えば、それもままならないのが実態です。通常の言語活動において穴埋め、並び替えなどの活動はありえませんから、通常のコミュニケーションでは歯が立ちません。コミュニケーションにおいては受信と発信は表裏一体で、受信と発信は有機的に繋がっています。コミュニケーションにおける言語活動においても、聞き読みの受信活動は話し書きの発信活動と表裏一体です。

コミュニケーション・ベースの発信型授業に切り替えれば、受信モードは発信モードと補完関係になり、その授業は活性化するでしょう。そうでなければいつまで経っても同じことを繰り返すだけです。これらlinking wordsは、実際にコミュニケーションで使ってこそ身に付く項目の一つです。筆者自身それを体験しました。筆者が留学して1年経ち少し日常会話についていけるようになった頃、現地の人たちが相手の言ったことに疑問を挟む場合、かなり頻繁に“though”を使っていることに気づきました。“Well, you’d better think it over again, though.”のような言い方です。留学する前はconnectorとしてのthoughなどを耳にすることは皆無でしたから、実際に耳にした時の何か新鮮なものに触れたような感覚を今でも鮮明に覚えています。読んで字のごとく、connectorsは会話を繋げる上で不可欠です。

もちろん、linking wordsを使わずに、 “Are you saying you are moving out of your parents’ house?” “You’d better think it over.” のように、文を羅列するだけで十分通じますが、“Are you saying you are moving out of your parents’ house? You’d better think it over, though.”とするだけで、話者の心情を格調高く表現できます。頭では分かっていても、こうしたconnectorsこそ、使わなければ身に付かず、それなりに時間が掛かります。(*12)(*13)

日常会話でさえそうですから、大学や大学院でのacademic contextの場合は、conjunctionsとconnectorsを使用して、言説内の因果関係(cause-effect)、目的(purpose)、二者択一(binary-choice)、比較対照(comparison/contrast)、時間—順序(temporal order)、否定(negation)、譲歩・条件(condition/concession)などの論理関係を的確に表現する能力が問われます。

本コラムでも取り上げましたが、TOEFL iBT® テストでは高等教育機関におけるcritical thinkingの重要性から、speakingとwritingのセクションでこの辺りの能力も厳しくテストされ診断されます。それはSAT, GRE, GMAT, LSATなどのテストにおいても当てはまります。Yale UniversityのGraduate Writing Centerが、わざわざlinking wordsの自動学習システムを提供しているのは、これらの表現をきちんと使えずに苦労している学生が意外に多いことを物語っています。

使わなければ身に付きません。ネット環境をうまく利用し、linking wordsも含め多彩な表現を学んでみましょう。

(2017年11月13日記)

 

(*1) 筆者のプロジェクト発信型英語プログラムでは、2年次の後期に『プロジェクト発信型英語 Do Your Own Project In English Volume 2』(鈴木佑治、南雲堂)のPart Ⅱ:Advanced Project, Academic Research and Presentationに従い、各自final research paperを書いて(poster)presentationをしました。3年次以降の学部、大学院の専門英語では、各自科学に関するテーマについてacademic paperを書き、筆者在任中は英語で学会発表した学生が続出しました。授業ではどうしても一般的なことしか教えられず、学生各自がpaperの質を向上できるようETS Criterionを使う自学自習システムを導入しましたが、online writing serviceを追加すれば効果大と感じ、定年で去る直前『グローバル社会を生きるための英語授業』(鈴木佑治、創英社・三省堂)でその構想を提案しました。グローバル競争に残るには、学部・大学院一貫の発信型英語プログラムとこうしたサポーティング・サービスは不可欠です。
(*2)アメリカのwriting centersの視察と筆者の提案については別稿で述べようと思っています。大学では英語のみならず日本語も含めて総合的なwriting serviceが必要です。英語の教員、日本語(国語)の教員、各専門分野の教員がチームを組んで取り組まなければ解決できません。また、狭義のwritingではなく、総合的な (oral, written, multimedia)presentation & discussionのスキルを目指す必要があるでしょう。アメリカの大学の強さの裏にはそうしたserviceの充実を目指しているところでしょう。
(*3)大学院に在籍する留学生を対象としたサイトかもしれません。筆者自身が1968年から1978年までの留学した当時の文科系の大学院プログラムでは、留学生も現地学生もきちんと英文を書けなければ、博士号取得に至るまでのコースワークをこなすことは無理でした。筆者が訪ねた各大学のwriting centerの責任者も当時を振り返りながら、現在はそこまで厳しくできないと述べていたのが印象的でした。
(*4)サイトのアドレスで検索しても繋がらない場合は、サイトのタイトル“Linking Words, Yale Center for Graduate Study”を入力し検索してください。他のサイトに関しても繋がらない場合は同様にタイトルを入力し検索してください。
(*5)またはcoordinateを使う場合もあります。
(*6)またはsubordinateを使うこともあります。
(*7)よってsentence connectorsという名称を使う場合もあります。
(*8)例えば、thoughは、subordinating conjunctionとconnectorの両方の使い方がありますが、文法的には全く違います。
(*9)“Mary is smart; so is Jane.”などの文におけるsoの用法。
(*10)大学の図書館にあるでしょう。筆者は博士論文の参考文献として前身のA Cotemporary Grammar of English(Randolph Quirk他.1972. Longman)を使用しました。アメリカで英語学の博士論文を書く場合の基本文献として必読でした。
(*11)筆者自身もそうでした。確かに知識としては持っていたのですが、実際のコミュニケーションでは使えず、それが可能になったのは、留学後3年ほど経ってからです。本コラムで述べまた宣言記憶(declarative memory)には知識としてあっても、使用したことが無かったので手続き記憶 (procedural memory)には無かったということです。日本の受験英語の限界です。使用する環境、すなわち、発信型モードの英語教育に変えない限り負のサイクルは続くでしょう。
(*12)従属接続詞(subordinating conjunctions)が存在する文は、主節に従属節を挿入するという2層構造の洗練された複文です。それに様々な文法上の制約が加わるので複雑です。それに対して、connectorsは、(coordinating conjunctions)の andやbutのように、挿入するだけで良いので構造上は簡単です。Yale Universityのlinking wordsサイトにあるconnectorsは、アメリカのacademic communitiesでよく使われます。筆者もnevertheless, otherwise, meanwhile, hence, furthermoreなどなど、大学院の同僚と映画を観に行った後でパブに行き映画についてとりとめもない感想を述べながらよく口にしたのを覚えています。英語で討論する為に是非とも身に付けたい項目です。
(*13)英語に限らずconnectorsに類する表現をspontaneousに使う機会を得るようになるには現地の人たちとの蜜なるコミュニケーションの機会が必要です。日本語でも「(だ)けど、もう一度考える方がいい。」「もう一考える方がいい、それは。」など、英語の“You’d better think it over again, though.”に呼応する表現をspontaneousに言いこなせる外国人は日頃から日本人との接触が多いことが推察できます。

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。