達セミに学ぶ 英語学習のヒント

全国の熱血教師による授業に学ぶ英語学習方法伝授

新潟県立村上中等教育学校/水戸直和先生
  • 新潟県立村上中等教育学校
  • 水戸直和先生
今回のヒント
学習を駆動させ、継続させる8つのポイント

はじめに

まず、前回のメルマガの記事の一部を引用してみます。

知識基盤社会を生きる私たちにとって、目の前の課題は刻々と変化します。それを目のあたりにし、その課題をどう攻略するか自分なりの作戦を立てることも必要なスキルだと私は考えます。

これを受け、今回はその作戦を立てるヒントをお示しできればと思います。

量が質を高める

学習法について考える場面で、よく「学習の質を高めよ」と言われることがあります。しかし私自身、この言葉を実感できるようになったのは、ある程度、大人になり、自分の学習法が確立できるようになってからです。考えてみれば最初から質を高められれば誰も苦労はしません。もし今、皆さんが学習法の確立に困っているのなら、まずはいろいろな本やサイトに掲載されている学習法などを試してみることをお勧めします。奮闘されていることは、ゴールに向かって一歩近づいていることを意味します。まずは一歩を踏み出し、それを継続することです。

だけど、中には「英語ばかり勉強するわけではない」「そんなのんきなことは言っていられない」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ごもっともです。そんな場合は、次の点を考えてみてください。

【ポイント1】あなたの特性を確認しましょう!―みんな違っていい―

かつて私は、4月になると、最初の授業で、自分が良いと思う学習スタイルを生徒の皆さんにも実行するよう働きかけていました。しかし最近はいくつかの学習法を紹介する方法へと変えました。というのも、私たち人間の特性は皆異なっており、視覚優位な人もいれば聴覚優位な人、運動感覚優位な人がおり、人によって好ましい学習スタイルは異なるということが昨今言われているからです。このことから、学習法を考える第一歩として、皆さん自身の好みや長所を自分なりに分析し、それに対応した学習法を試してみると良いと思います(興味がある方は「学習スタイル」「NLP-VAKタイプ」などの言葉で検索してみてください)。

【ポイント2】意識や目的を確認しましょう!-案外忘れがち―

次に、自分が選んだ学習法を試みる前に、ぜひその目的や目標に意識(noticing, awareness, consciousness)を向けて、確認をしてください。例えば音読練習は、語学には不可欠なものですが、時折、音読をしても効果が感じられない生徒さんに出会うことがあります。話を聞くと、指示された練習回数にこだわっていたり、単にがむしゃらに音読している場合が多いようです。これは小学校の国語の授業現場でも指摘されており、「カラ読み」が原因とされています。せっかくの学習や練習を効果的なものにするためにも、何を意識するのかを常に確認してください。例えば速読の力を育成するためには文法や語彙にこだわらず「意味」を意識しながら音読する、また語彙や「表現」を自分のものとしたい(「内在化」といいます)のであれば単語や文構造など、英文そのものに注意を向けながら音読するとよいでしょう。

【ポイント3】素材は理解を伴うものを選ぶ!-特に高校生以上は思考も重視-

では次に教材について考えてみましょう。以下の文章を読み、問題に答えてみてください。

学習を駆動させ、継続させる8つのポイント

続いて、以下の問題も考えてみてください。

学習を駆動させ、継続させる8つのポイント

文章Aよりも断然、文章Bのほうが頭に入りやすかったと思います。この例から分かるように、理解を伴わないものは頭に残りにくいものです。そこで、音読や復習活動を行う場合は、授業で使った教材、英文の構造や内容が丁寧に解説してある素材を使うことをお勧めします。また、理解を伴っていると、実は「創造性」も発揮されます。例えば先の例では直接文章には書かれていませんが、以下の問いに答えることができます。

学習を駆動させ、継続させる8つのポイント

彼らが「釣り」に出かけたことが「港」「魚」「川」などという言葉のおかげで推測できたと思います。このようにある素材を、理解を伴いながら自分のものとすることで、そこには直接書かれていない情報を創造的に処理することもできるのです(「言葉の創造的使用」に関心のある方はCollins Cobuild English GrammarのCreative useのコーナーを読んでみてください!)。

【ポイント4】自分で自分に説明してみる!-実は教えている先生が一番力が付いている!―

私たち教師の勉強会などで昨今、必ず出てくるものに「ラーニングピラミッド」があります。これによると人から話を聞くだけの学習法は定着率が低く、一方、人に教えることが一番頭に残るとされる理論です。私たち教師の多くは日常的に、これを実感しています。そう、授業で一番力が付いているのは私たち教師なのです。これを個人学習に応用すると、音読練習などをする前に、その素材の文法的構造や、意味、音声現象などを口頭で自分で自分に説明する活動を入れると効果的です。

【ポイント5】「じっくり型」と「楽しくたくさん型」を考えてみる!-精読と速読、精聴と速聴―

私たち教師は授業を行うために、教科書を読み込んで予習をし、プリントやスライドの準備をし、さらに教室で皆さんの様子をみたり、説明をし、しばらく時期をおいてテストを作ったりしています。このようにひとつの素材に対し、かなりしつこく、じっくり素材に向かい合っています。

ただ量が質を生むことや学習の継続を考えた場合、この逆のアプローチを取ることも大切でしょう。例えばやさしめの絵本を楽しく読んでみる、ネット記事にさっと目を通す、好きな洋楽を聞いてシャドーイングして歌ってみるなど、楽しみながら英語に触れる場面も取り入れてみましょう。よく精読と速読、精聴と速聴が必要と言われていますが、じっくり学習する場面と楽しくたくさん英語に接する場面を考えてみましょう。「じっくり型だけでは長続きしない!」という皆さんは、「楽しくたくさん型」学習を、目標や意識を持った上で取り組む時間を増やすというのも一案です。

【ポイント6】背景的知識やキーワードを充実させよう!-言語学習と並行して―

ここでは以下の文章を読んでみてください。

学習を駆動させ、継続させる8つのポイント

本文の内容が理解できたでしょうか。では次の文章はいかがですか。

学習を駆動させ、継続させる8つのポイント

CとDの文章の違いはわずかで、「洗濯」という言葉があるかないかです。この1語の有無によって背景知識が活性化され、理解度は大きく高まったかと思います。このように様々な話題について背景知識を持つこと、またキーワードを覚えておくことは語学には大切な要素です。

【ポイント7】ミスする場面があるかを確認しよう!

考えてみれば、学習とは「分からないことを分かるようにする」「できないことをできるようにする」ことにほかなりません。言い換えれば、自分が分かっていないこと、できないことを明らかにするのが学習の第一歩です。私は授業で生徒の皆さんにいきなり英文を音読させることがよくあります。その際、音読できない語句や読み方に自信がない語句に下線を引かせ、自分が分からないことに注意を向けるようにします。そのあと、CDなどを聞いて確認し、読めるように練習をさせます。この方法では「生徒が誤った読み方を覚えるのでは?」とのご指摘もいただくのですが、1回の音読で読み方が定着するとは思いません。これは「間違えることを恐れなくていいんだよ」「むしろ間違えることが第一歩なんだよ」という私からのメッセージでもあります。

【ポイント8】旅路を続ける工夫を持とう!

語学は長い旅路でもあります。語学の先にあるもの(例えばサッカー留学したい、など)をイメージしたり、仲間を見つけたり(例えば友達と問題を出し合ったり、LINEを英語でやりとりしてみる)、自分のこれまでを振り返ること(例えば検定を受けてみるなど)も大切な要素です。

最後に

このページをご覧になっている皆さんは英語学習に関心を持たれている方が多いだろうと想像しています。少し、のんきな言い方になりますが、時代がどんどん流れていくこの世界、大切なのは知識そのものよりも学び方にあると言われています(目の前の検定や試験で成果を上げたいと努力されている最中でこの記事に目を通していただいた方には若干申し訳ないのですが)。私たち自身にふさわしい学習法を見つけること、これが私たちの生涯にわたる目標なのかもしれません。ひるむことはありません。まずは第一歩を踏み出しましょう!

学習を駆動させ、継続させる8つのポイント

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    水戸直和先生 プロフィール
  • 新潟県立村上中等教育学校 英語科教諭。司書教諭。新潟大学大学院教育学研究科修了。在学中、松澤伸二先生から「チャンキング」、また大浦容子先生から認知心理学、また足立幸子先生から読書指導について学ぶ。現在Data Driven Learningについて関心があり、千葉大学・西垣知佳子先生よりご指導いただく。著書に『Stepwise英語総合問題集 1, 2, 3, 4, 5』(文英堂)。授業以外ではモノやサービスの開発、イベント開催などの背景に関心がある。「大地の芸術祭2018」作品鑑賞パスポート購入者。『日経ビジネス』(日経BP社)、『CNN English Express』(朝日出版社)年間購読者。
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